クラシックプロのXLRコネクタ&ケーブルでマイクケーブルを自作した。

マイクケーブルは信頼できる市販品を使うのが、品質面でも精神衛生上も良いと思います。以上!
・・・って、これで終わってはこの記事を書く意味がありません。ケーブルやコネクタを自分でチョイスしたい、安価に大量のケーブルを用意したいなど、ちょっと変わった要求へのソリューションは、材料を仕入れてハンドメイドで制作することになります。
小生も、マイクケーブルはいつもサウンドハウスの既製品を購入していましたが、今回は、できるだけ安価にケーブルを自作することを目的に作業をしてみました。
ケーブルの仕様、材料
ケーブル長は30cmでXLRオスメスとします。すぐそばにある機材を接続したり、ケーブルをちょっとだけ延長したいときに使えそうな長さにします。
30cmのマイクケーブルって、市販品ではこちらのクラシックプロ以外はあまり見かけません。あまりにもニッチなので、必要な方は自作しているのかもしれませんね。
こちらの製品は、クラシックプロらしく税込み250円という激安価格。普通にパーツを買い揃えるとこれより高くなってしまい、自作する意味が薄れてしまいます。
そこで使うのはこちら。
- XLRコネクタ・・・クラシックプロCXL1&CXL2 計180円
- ケーブル・・・クラシックプロの10mマイクケーブル 900円→ここから必要な分だけを切り出す。ケーブル30cm分を30円と想定
いずれも、先のXLRコネクタ比較のために購入したものです。マイクケーブルにはコネクタも付いていますけど、原価を正確に計算できるわけもないので、計算を単純にするためケーブル価格の1/30の値段を計上しました。
つまり、材料費210円で30cmのマイクケーブルを自作できることになります!うーむ、やる気が湧いてきた!

2本ペアで使うことも想定し、2本のケーブルを作ることにしました。
工具

用意した道具はこんな感じ。カッターナイフと目打ち(千枚通しなど)も用意しておきましょう。
ケーブルを加工する

クラシックプロのケーブルは単体では市販されておらず、両端にXLRコネクタ(このコネクタも単品販売されていません)が付いたマイクケーブルの状態で販売されています。
Classic Pro High Grade Professional Microphone Cableと印字されています。

作業開始!先端から2cm弱くらいのところで外側のゴム被膜を向きます。内部を傷つけないようにカッターの刃を一周させましょう。

ケーブルメーカーにより千差万別ですが、このケーブルでは紙の保護シートが入っていました。

紙のシートを取り除くと、銅線の細かい編組(へんそ)が出てきました。

編組はグランドに接続するので、1本によじっておきます。その中に、緩衝材と思われる糸と2本の心線が出てきました。

糸はカットします。編組や心線を傷つけないように慎重に・・・!

2本の心線は黒い被膜でしたが、内部は赤と透明な被膜になっていました。それぞれワイヤーストリッパーで皮膜を剥ぎ取り、銅線を4mmほど露出させます。
はんだをのせる

それぞれにはんだをのせておきます。バラけないようにすることと、コンタクトへのはんだ付けをスムーズにする目的があります。

本当は万力や自在クリップ的なものがあると作業がはかどるんですけど、小生は持っていないので、ありあわせの板切れに洗濯バサミ的なものでケーブルを固定したりして作業を進めました。作業はとてもやりにくいのでオススメしません(笑)

コンタクト側にもはんだをのせておきます。真ん中の2つははんだがのった状態ですが、分かりますか??

コンタクトにはんだをのせるときにも固定が必要ですが、このようにオス側(左側)のコンタクトをつかむのは厳禁です!!理由は後述しますが、重大な作業失敗につながる危険があります。必ずインサート全体をつかむようにしましょう。
ブッシングとチャックをケーブルに通す

ケーブルとコンタクトにはんだをのせたらいよいよ結線!ですが、その前にブッシングとチャックをケーブルに通しておきます。ブッシングは結線後に入れることができませんので、これを忘れると悲しい気分になります。チャックはスリットがあるので、結線後でも付けられるんですけどね。
結線する

いよいよ結線!3本の線をピン番号を間違えないようにはんだ付けしていきます。原則はこちら。
- 1番=GND(グランド、編組を接続)
- 2番=HOT(ホット、有色線を接続)
- 3番=COLD(コールド、無色線を接続)
心線の色は様々なので2番と3番はどちらでも良いですが、オス側とメス側とで色が変わらないようにします。
そして改めて、オス側コンタクトをつかむのはNGです!!理由はこの後!!!

ようやくオス側のはんだ付けが終わり、やれやれと思ったのもつかの間、なんとオス側コンタクトが歪んでしまいました!
理由は明快です。はんだ付けの際にコンタクトにもはんだごてを当てるので、当然ながらコンタクト自体も高温になります。この状態でコンタクトをクリップでつかんで余計な力を加えてしまったので、コンタクトの熱でインサートの土台が溶けて歪んでしまったものと思われます。

コンタクトが歪んで並行が出ていないと、スムーズな抜き差しができず、最悪相手のコネクタを壊してしまいます。このままでは廃棄せざるをえません。
どうせ廃棄するならと、このように割り箸を挟んで間隔を広げつつ、再びコンタクトを熱して歪み矯正に挑戦してみました。
何度か微調整した結果、コンタクトは平行に戻り、メスコネクタにも問題なく入るようになりました。ああ良かった!

気を取り直して、メス側もはんだ付けします。見た目ではなく、あくまで番号を頼りに、結線先を選択しましょう。
この2つを見比べて分かるとおり、オスとメスとでは、見た目の線の配置が異なります。オスとメスとで鏡写しのようになるからで、言葉を変えると、左のメス側は180°回転させた状態でオスと接続するからです。
なので、「手前が赤、奥がグランド」などと覚えてしまうと間違った結線をしてしまうことになります。あくまでピン番号を確認しながら正しく結線しましょう。

結線が完了したら、チャックを装着し、ブッシングをねじ込んで、作業は一応完了。
テスターで確認&リカバリーする

ですがこのあと、確認という大事な作業があります。結線ミスのほか、接続不良や一時的にショートすることなど無いか、テスターを使ってチェックします。
小生が使っているのは、ベリンガー(behringer)のCT100というケーブルテスターです。
各線が正しく結線できているかどうかは導電テスターなどでもできますけど、このケーブルテスターの良いところは、実際に接続した状態、言い換えれば、嵌合による力が掛かった状態での通電をチェックできることです。
コネクタを相手に接続したときには、各部に力がかかり、ケーブル単体のときには起こらなかった内部の歪みが出る可能性だってあります。そういった状態でも各線が正しく接続された状態が維持できているかが重要、というわけです。
↑取説はこちらから見ることができます。

先ほどの写真だと、INPUTとOUTPUTのPIN1、PIN2、PIN3がそれぞれ正しく接続しているというランプが付いていました。ケーブルは正しく製作できたといえます。

意気揚々と2本目をテストしてみると・・・なんということでしょう!必要ない部分のランプが付いちゃっています。コネクタ内部でショートが起こっているようです。OUTPUT側(メスを接続している方)のPIN1=GND=編組がほかのピンに接触してしまっているのでしょうか??
まずは落ち着いて、作業内容を確認してみます。ブッシングをねじって再度分解してみると・・・写真を取り忘れましたが、はんだ付けした部分がねじれてコネクタ内部で潰れたような状態になっていました。もしかしたら、ブッシングを強引にねじ込んでしまったかもしれません。
潰れた部分をいったん伸ばして、テストのためにブッシング無しの状態でテスターに接続してみました。

なんかエヴァンゲリオンのダミープラグ状態みたい(笑)
ともかく、この状態ではショートする部分はありませんでした。

INPUT側(オス側)のみブッシングを組み込んだ状態でも異常はありませんでした。ということは、メス側のブッシング取り付け不具合が原因かも。
メス側のはんだ付け部分がねじれないように慎重にブッシングをねじ込んだところ、ショートは無くなりました。こんな風に異常を確認して対処することが、信頼性のあるケーブル製作には重要です。

ブラックコネクタのCXL1BとCXL2Bを使ったケーブルも作りました。こちらは約1.5m。身長にやや届かないくらいの長さで、卓上の少し離れた機材を繋ぐのにちょうどよい長さです。
実機で確認&リカバーする

テスターでのチェックはあくまでも通電試験なので、実際に使ってみて問題ないか確認しておかなければなりません。
残念ながら、今回作成した4本のうち2本は、マイクを接続しファンタム電源を送るとわずかにノイズが載ることが分かりました。
上記のとおりテスター試験には合格しているので、このまま現場に持って行ってもおかしくなかったです。シビアな録音現場でノイズに遭遇し慌てることを想像すると青くなってしまいました。
問題は、はんだ不良か、そうでなければコネクタかケーブルの不良と考えられます。これからリカバリーを考えます。
まとめ
今回2種類計4本のXLRマイクケーブルを作りました。トラブルにも遭遇しましたけど、自らの力でケーブルを作り上げるのは、何故かとっても楽しいです(笑)
けど、やっぱり痛感したのは、確実で安全な作業には固定が大事ってこと。
自転車整備でもそうですが、どんな作業をするにもまずは掃除と固定が肝心で、これができれば作業の半分はできたも同然。
はんだ付け作業も同じで、小生はこて台も固定器具も持ってなくて、今回も危なっかしい作業をしてしまいました。反省。この作業のあと、はんだごてを新調し、こて台、固定器具も購入しました。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません